ホーム くろしお

ボクシングデー

2022年12月5日
 先月の中ごろ、ショッピングセンターで「ブラックフライデー」のポスターを目にした。「ああ、5年くらい前に国が音頭を取って始めたあれか」。完全な勘違い。それは「プレミアムフライデー」だった。

 「プレミアム―」は月末の金曜日に仕事を早めに切り上げて、ショッピングや家族のだんらんに時間を使ってもらおうという取り組み。一方「ブラック―」は、年末商戦入りを告げる米国発祥の大型セール。米国の感謝祭の翌日の金曜日で今年は11月25日だった。

 日本では知名度が低いものの、英国やカナダなどでは年末にもう一つ、消費イベントがある。12月26日の「ボクシングデー」だ。ボクシングとは「箱に入れる」という意味で、昔、クリスマスに休めなかった労働者に上流階級の人々がプレゼントを箱に入れて渡していた。

 元々は、貧しい人々への寄付が入った箱を教会が開ける日だったという。そこにあるのは、社会の人たちにあまねく心を寄せるという精神だろう。今、街へ繰り出せば、きらびやかな電飾に楽しげなクリスマスソング。だが、それらを楽しむどころではない人もたくさんいることにも目を向けたい。

 きのう付本紙に、寄付食材を困窮家庭などに配るフードバンクへの寄付が追いつかないとの記事があった。1日に始まった歳末たすけあいをはじめ、この時期さまざまな募金活動も活発になる。「ボクシングデー」の名は浸透せずとも、その精神は体現したい。

このほかの記事

過去の記事(月別)