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生まれ変わっているなら

2022年12月8日
 おととい鹿児島県の知覧特攻平和会館に行った。過去に訪れたのは、すべて終戦の日の前後だったが、今回は初めて12月初旬を選んだ。戦争が終わった日でなく「戦争が始まった」12月8日直前にしたのだ。

 「特攻作戦を分析した米軍」という企画展が、開催中だった。米軍が当時撮影・分析した日本の特攻作戦の映像や写真が上映、展示されており興味深く見た。平日だったため人は少ないだろうと思っていたが、どこかの高校生の団体が来ていて、にぎわっていた。

 ずらりと並んだ若き特攻隊員たちの写真。その下の方には、彼らが親や恋人などにあてた手紙。目を赤くしてそれらにじっと見入る女子生徒など、みな神妙な面持ちだ。自分たちとほぼ同じ年齢の若者が”死地に赴く”ことを求められた時代を、彼らはどう感じただろう。

 特攻隊員たちの書き残したものの中に「七生報国」の言葉がある。「7回生まれ変わって国に忠誠を尽くす」という意味。もし彼らに生まれ変わりがあるなら、今度は現代のように取りあえず平和な時代に生まれ、おととい会った高校生たちのように青春を謳(おう)歌(か)できていればいいなと、ふと思った。

 81年前のきょう、真珠湾攻撃の情報に接しても数年後にああいう形で自分の人生が終わるとは思ってもいなかっただろう特攻隊員たち。くだんの高校生たちにはそんな日は来ないことが当たり前であり続けることを改めて願う「太平洋戦争開戦の日」である。

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