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戦は過去のものにあらず

2023年1月3日
 今年の初日の出は木城町役場近くにある城山公園から拝んだ。かつてここでは「初日の出を迎えながらの日本一早い成人式」が行われていた。それを何度か取材した懐かしさから、あえてこの場所を選んだ。

 成人式の会場でなくなった現在では、来ているのは10人ほど。「メロディー時計台」から東方を見る。山の木々などに阻まれ、太陽が海から出てくるところは見られない。日の出の時刻から10分後、生い茂った葉の隙間を縫って差し込んできた光は神々しかった。

 しばらくその光を浴び、やがて完全な姿を現した”ご来光”に手を合わせた後、南の方に目をやる。小丸川を挟んで立ち並ぶ家々や田畑。早朝とあり、走っている車もほとんどない。静かでのどかな風景。かつてこの地を舞台に、大合戦が繰り広げられたとは想像できない。

 「九州の関ケ原」と呼ばれる、2度の高城合戦である。最初は豊後の大友氏、次に豊臣秀吉配下の圧倒的軍勢に攻められながらもこの城は最後まで陥落することはなかった。久しぶりに訪れるにあたって、昨年刊行された町教委編の「高城合戦」を読み、どれほど壮絶な戦いだったかを再認識した。

 そんな時代に生まれないでよかったと、しみじみ思いつつも「戦(いくさ)は決して遠い過去のものではない」と改めて思い知らされた昨年を振り返る。景気回復など課題はたくさんあれど、まずは「とにかく一年間平和で」と強く初日に祈った元旦だった。

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