「楽しかったときは過ぎ去り、ただ思い出だけが残る」―。１９６７年、人気絶頂だったピーター・ポール＆マリーが、日本でコンサートを行った。サービス精神旺盛な彼らは時折、日本語を交え話をした。

　そのときのライブ盤を昔、持っていた。収録曲の中に「グッドタイムズ　ウィー　ハッド」というのがある。直訳すれば「私たちが過ごしたいい時間」といったところか。冒頭の言葉はこの曲が始まる前にピーターかポールかのどちらかが日本語で言ったものだ。

　なぜか分からないが、１０代半ばで初めてこのフレーズを聴いたとき、妙に頭にこびりついてしまった。そして困ったことに、その後、今日に至るまで楽しい時間が終わり日常に戻る際、いつも頭の中によみがえってくるようになった。仕事始めのきのうも例外ではなく―。

　多くの方が同じような心境だったことだろう。３年ぶりに新型コロナウイルスによる行動制限がなかった年末年始である。遠く離れた家族に会ったり、買い物やイベント、さらに旅行を楽しんだり。だが、１週間などあっという間。楽しい時間は無情にも過ぎ去り、まさに「思い出だけが残る」だ。

　きのうは取りあえず「新年のあいさつ回り」で、きょうから本格始動という人も多かろう。〈心おもき仕事始の鞄（かばん）かな〉（皆川白陀）。そんな句に共感しつつも気分を切り替え、仕事に精を出したい。２日間頑張った後に待っている３連休に思いをはせつつ…。