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突然の訪問客

2023年1月21日
 年明け早々、手作りの竹箸を頂き気持ちが和(なご)んだ。宮崎市の田岡美利(みとし)(87)、千代(84)さん夫婦が届けてくださった。新聞が大好きで特に本欄のファンという。長年疑問だったコラム名の由来を尋ねるためだ。

 手ぶらでは失礼だろうと箸を携えて来訪。宮崎大宮高6回卒の美利さんが同校校歌を歌い上げる。「黒潮岸をあらひ~?」。冒頭の「黒潮」と因果関係があるのではとの推測だった。校歌制定は1950年。本欄改題が65年。命名者が大宮卒かも?と妄想を膨らませた。

 元社員が日南海岸をドライブ中に思いついたというエピソードが残るが、大宮卒かどうかまでは不明で謎解きには至らなかった。だが、美利さんの張りのある歌声と記憶力に感服。孫に「120歳までいける」と励まされ、書き初めに「これから人生後半戦」としたためたそうだ。

 作詞した長嶺宏さんの回想から。「われわれは戦争で多くのものを失った。しかし、どんなことがあっても決して失ってはならないものがあるはずだ。…永遠に変わらないものがあるはずだ。それを求めるのが教育ではないか。そう思って真・善・美のイデーに到達した。こうして校歌は生まれた」。

 終戦直後の同じ時期に作られた小林など他の高校にも、敗戦から希望を希求する思いのにじむ校歌が残っている。先人の深い思いの結晶と知り、何気なく、時には嫌々歌っていた過去を恥じたくなった。突然の訪問客がもたらしてくれた幸運な気づきだった。

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