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零度下の世界の危なさ

2023年1月24日
 「そこに一本の細かな樹があって、そのほそい枝が一本一本尖端(せんたん)まで曇り硝子(がらす)を着せたように、氷の薄い膜で包まれていた」。作家の伊藤整が小樽の南方にある遠藤山という山に登ったときの回想録である。

 霧氷という現象を見事に表現している。さらに「こういう現象のそばに来ていることが、人の世の空気を離れて真空のような零度下の特殊な世界に入った危なさを感じさせた」とも。霧氷は、県内でも祖母山や韓国岳、五ケ瀬町の向坂山などで見ることができる。

 今年の宮日の「宮崎心百景カレンダー」。1月は、えびの市の白鳥神社境内の風景だ。木々や石灯籠に積もった雪が冬の情趣へといざなう。こうした氷や雪がつくる光景は風情がある一方で伊藤が言うように「零度下の特殊な世界の危なさ」のようなものをはらんでいる。

 きょうから明日にかけ今季一番の寒気が日本列島上空に流れ込む。北海道や東北、北陸などはもちろん、本県でも山沿いを中心に雪が降る恐れがある。水道管の凍結や破裂に伴う断水が発生する可能性も。宮崎地方気象台は、路面凍結への注意を呼びかけている。最も寒くなるのは明日の朝という。

 わりとよくあるのが中山間地にチェーンなどの装備なしで行き、事故には至らないまでも凍結した路面で車が立ち往生してしまうというパターン。高速道が通行止めになることもある。外出する際には事前に情報を得るなどして慎重の上にも慎重を期したい。

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