ホーム くろしお

少子化の原因は国民?

2023年1月28日
 その町には少子化対策として「45歳以上の未婚男女は市民権を剥奪する」という条例が存在する。その年齢が目前に迫った、介護施設を営む女性は市民権を守るため、身元不明の男性との偽装結婚を企てる。

 最近DVDのレンタルが始まった映画「鈴木さん」。典型的なディストピア(反理想郷)映画である。舞台は「とある国の、とある町」となっているが日本であることは明らかだ。同調圧力と排除。今この国が抱える問題を、これでもかというほど皮肉っている。

 特に、未婚者に対して地域社会が強いプレッシャーをかけるシーンはホラーに近い。見ていて思い出したのは、自民党の麻生太郎副総裁が、先日あった講演会で「少子化の最大の原因は晩婚化である」との持論を展開したことだ。これがネット上などで批判を浴びている。

 今回の麻生氏の発言はどんな文脈で言ったのか分からないので批評は難しい。ただ、これまでこの国に少子化の主原因を個人、特に女性に負わせるような空気はなかったか省みる必要はあろう。くだんの映画の中で未婚者が非難、攻撃される場面は誇張はあっても全くのフィクションとは言い難い。

 少子化対策に向けて意欲を見せる岸田文雄首相。施策の実行に当たっては長年政治が”放置”してきたものにも真摯(しんし)に向き合い、徹底して少子化の背景を分析することが大事だろう。少なくとも「これが最大の原因」といえるような単純なものではないはずだ。

このほかの記事

過去の記事(月別)