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ハンドドライヤーの復活

2023年1月30日
 ちょっと感慨深いものがあった。少し前、商業施設のトイレで手を洗い、ふと見るとハンドドライヤーに見慣れた「使用中止」の張り紙がない。「まさか使えるようになったのか?」。半信半疑で手を入れた。

 すると風が勢いよく吹き出し、瞬く間に水滴をはじき飛ばした。懐かしい感覚―。思えば3年前の2020年5月、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が「新しい生活様式」を提言。そこに「ハンドドライヤーを使わない」ことも盛り込まれていた。

 経団連の「感染予防対策ガイドライン」にも同様の内容があった。経団連は、その翌年には「ウイルス飛散の可能性が低い」として、オフィスや工場などを対象にハンドドライヤーの使用を解禁。商業施設などにも広がることが期待されたが、なかなかそうならなかった。

 ハンドドライヤーを久しぶりに使ったその日。よく行く飲食店に入ると、そこではしばらくやめていた「来店者カード」の記入を再開していた。感染者は多いが重症者は減った、しかし、高齢者の死亡は相変わらず多い―という中で、どこも何を制限し、何を再開するか試行錯誤しているのだろう。

 コロナの感染症法上の位置付けが、5月8日から「5類」に引き下げられ、感染対策は個々に委ねられる部分が多くなる。だが、コロナの先行きは依然不透明だ。それだけに行政には状況の変化に応じて細やかなメッセージを発し続けることが求められよう。

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