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今は3年も待てない

2023年3月3日
 いつも寝てばかりの怠け者の男。3年間、寝続けたかと思うと突然起き上がり巨石を使って川をせき止めその水が田畑に流れ込んで干ばつに苦しんでいた村人たちを救い…。ご存じ民話の「三年寝太郎」だ。

 似たような話が中国にもある。楚の国の荘王は即位から3年もの間、政治に見向きもしなかった。臣下が、3年間鳴きも飛びもしない鳥に例えて王をいさめると「鳥が何もしないのは、意思を固める準備をしているからだ」と答え、その後、楚を強大な国にした。

 よく使われる「鳴かず飛ばず」は、正式には「三年鳴かず飛ばず」。この中国の逸話は、その語源である。「実力を発揮する時期が到来するのをじっと待つ」ことが本来の意味。だが、今では単に「長い間、結果を出せないでいる」という意味で使われることの方が多い。

 寝太郎も荘王も、3年後にきちんと結果を出し、めでたしめでたし。ただ、時間の流れが速い現代はそこまで待てない。一昨年の10月に発足した岸田内閣は「3年」で考えると来月折り返しだが…。支持率は低迷を続け、大型国政選挙がないとされる「黄金の3年間」はもはや死語となりつつある。

 首相がアピールしていた「聞く力」。その耳がきちんと国民の方を向いているか今一度省みてもらいたい。きょう3月3日は、3のぞろ目で「三の日」であり「耳の日」でもある。よって「三」が絡む話で首相にはおそらく耳障りであろう苦言を呈してみた。

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