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ウィルスさんが認知症に

2023年3月8日
 米国の人気アクション映画のシリーズに「ダイ・ハード」がある。不運で事件に巻き込まれる刑事を主人公にした映画。最初はタイトルを「激しく死ね」という意味かと思っていたが、むしろ正反対に近い。

 英語で「なかなか死なない」転じて「タフな」といった意味。確かにブルース・ウィリスさん(67)演じる刑事はいつも追い込まれても絶対諦めず、孤軍奮闘して悪漢どもを撃退する。そのウィリスさんが認知症を患っていると家族が公表し、世界に衝撃が走った。

 既に俳優業は引退。さらに円熟味のある演技を期待していたので寂しく思う。だが公表された写真ではリラックスした表情だったので少し安堵(あんど)した。日本では高齢化の進展とともに、認知症の人が増えている。この難しい病気を身近な問題として考えるきっかけになった。

 認知症は新たな治療薬や予防法がよく話題になる。だが薬の対象にならない重症の人も安心して暮らせる社会が必要だ。昨年11月に日本認知症学会など国内の関連6学会が公表した提言「認知症疾患治療の新時代を迎えて」では、医療体制の整備と認知症との「共生」に向けた取り組みを呼びかける。

 ウィリスさんの家族は声明で、もし彼が自分で行動できるなら、重要な問題に対する意識を高めるために病気と向き合う姿を発信したはず、という内容を述べている。夢や希望を与えてくれた彼に感謝し、家族とともに穏やかな日々を過ごすことを祈りたい。

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