人情論だけでは…
2023年3月10日
江戸時代の初め、伝馬(てんま)町牢屋敷の牢屋奉行に石出帯刀(いしでたてわき)吉深(よしふか)という人がいた。1657年の1月に「明暦の大火」(振り袖火事)が発生。江戸城天守閣や江戸市街の6割を焼き、10万人にも及ぶ犠牲者が出た。
牢屋敷に火の手が迫る中、吉深は独断で「切り放ち」(期間限定の囚人の解放)を断行。切腹覚悟の決断だった。その際「火事が収まったら必ず戻って来るように」と囚人らに伝えたという。囚人らは吉深の心意気に感じ入り、鎮火の後全員戻ってきたとされる。
それから時は流れ現在。政府は先日、刑事訴訟法などの改正案を閣議決定した。保釈された刑事被告人らの逃亡を防ぐため、裁判所が衛星利用測位システム(GPS)の装着を命令できることなどが盛り込まれている。海外への逃亡を防ぐ必要がある場合に限定するという。
罪を認めないと保釈されない、いわゆる「人質司法」が改善されることを期待する声、被告側に負担を強いることを懸念する声と現時点での専門家の評価はさまざまだ。裁判所の召喚に応じず公判に出てこなかったり、指定された住居を離れたりした場合の刑事罰も新設し幾重にも逃亡防止を図る。
かの吉深は、切り放ちの際に「帰ってこなかった者は捕まえて死罪」と言ったが戻ってきた全員の罪が軽くなるよう老中に嘆願した。そんな義理人情論だけではやっていけない現代の「お解き放し」事情。その行方を泉下の吉深はどう思って見ているだろう。
牢屋敷に火の手が迫る中、吉深は独断で「切り放ち」(期間限定の囚人の解放)を断行。切腹覚悟の決断だった。その際「火事が収まったら必ず戻って来るように」と囚人らに伝えたという。囚人らは吉深の心意気に感じ入り、鎮火の後全員戻ってきたとされる。
それから時は流れ現在。政府は先日、刑事訴訟法などの改正案を閣議決定した。保釈された刑事被告人らの逃亡を防ぐため、裁判所が衛星利用測位システム(GPS)の装着を命令できることなどが盛り込まれている。海外への逃亡を防ぐ必要がある場合に限定するという。
罪を認めないと保釈されない、いわゆる「人質司法」が改善されることを期待する声、被告側に負担を強いることを懸念する声と現時点での専門家の評価はさまざまだ。裁判所の召喚に応じず公判に出てこなかったり、指定された住居を離れたりした場合の刑事罰も新設し幾重にも逃亡防止を図る。
かの吉深は、切り放ちの際に「帰ってこなかった者は捕まえて死罪」と言ったが戻ってきた全員の罪が軽くなるよう老中に嘆願した。そんな義理人情論だけではやっていけない現代の「お解き放し」事情。その行方を泉下の吉深はどう思って見ているだろう。