あいまいな日本の私
2023年3月15日
亡くなった作家大江健三郎さんの講演を聞いたことがある。2008年7月に宮崎市民文化ホールであった「九条の会」憲法セミナー。折しも改憲論議が盛んだった時で満席の会場には熱気があふれていた。
大江さんは同会の発起人だが、来県は慌ただしく決まったとのことで驚かされた。それほど憲法を改定する動きに反対する意思が強く、広く直接訴えたかったのだろう。やはり講師だった社会活動家・湯浅誠さんは「同じ舞台に立つのは光栄です」と話していた。
大江さんは自身が被告として関わる「沖縄ノート」裁判の主張を紹介しながら憲法条文に込められた歴史的な背景を強調。語り口はゆっくりで淡々としていたが、沖縄戦で集団自決した島民を「国に殉ずる美しい心」として美化する動きに「戦っていきたい」と語気を強めた。
1994年のノーベル文学賞の受賞で行った記念講演の題は「あいまいな日本の私」。日本人初のノーベル文学賞・川端康成の記念講演「美しい日本の私」を意識しているのは間違いない。美しい伝統だけでなく、負の部分も含めて多角的な視点から日本人を自覚したいという思いが込もっていた。
幅広い社会問題に発言を続けた大江さん。先の講演では、小学生から「戦争のない国にするにはどうするか」と問われて「人間にとって大切なことは注意深くすること。そういう人が増えるといい」と丁寧に答えていた。時折見せた慈愛深い表情が心に残る。
大江さんは同会の発起人だが、来県は慌ただしく決まったとのことで驚かされた。それほど憲法を改定する動きに反対する意思が強く、広く直接訴えたかったのだろう。やはり講師だった社会活動家・湯浅誠さんは「同じ舞台に立つのは光栄です」と話していた。
大江さんは自身が被告として関わる「沖縄ノート」裁判の主張を紹介しながら憲法条文に込められた歴史的な背景を強調。語り口はゆっくりで淡々としていたが、沖縄戦で集団自決した島民を「国に殉ずる美しい心」として美化する動きに「戦っていきたい」と語気を強めた。
1994年のノーベル文学賞の受賞で行った記念講演の題は「あいまいな日本の私」。日本人初のノーベル文学賞・川端康成の記念講演「美しい日本の私」を意識しているのは間違いない。美しい伝統だけでなく、負の部分も含めて多角的な視点から日本人を自覚したいという思いが込もっていた。
幅広い社会問題に発言を続けた大江さん。先の講演では、小学生から「戦争のない国にするにはどうするか」と問われて「人間にとって大切なことは注意深くすること。そういう人が増えるといい」と丁寧に答えていた。時折見せた慈愛深い表情が心に残る。