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三日見ぬ間の桜

2023年3月17日
 〈世の中は三日見ぬ間の桜かな〉。3日見ない間にすっかり散ってしまう桜の花に例えて世の無常を詠んだ句である。気象庁が14日東京の桜の開花宣言を行った。2020、21年と並び、観測史上最も早い。

 宮崎市では台風の影響だったのか、昨年秋に「季節外れの開花」があったが、あれはあくまでも”番外編”。春の開花は21日ごろという。きのう宮崎市の県総合文化公園内を歩いた。たくさんのつぼみが「その日」に向け着々と準備を進めているかのようだった。

 作家の永井龍男は、桜の木の下に立つと1年がかりで花を咲かせた桜の心や喜びが人の胸に染みてきて、生きもの同士の切ない共感を覚える―という趣旨のことを書いている。その上で花見という行事は、そうした静謐(せいひつ)さを哀惜するところから生まれたのではないかとも。

 「三日見ぬ間」に変わってしまう桜と違って、3年間変わらなかったマスク着用の光景。そのマスクが緩和されたのは東京の開花宣言の前日だった。都は都立公園での酒類を伴う花見の自粛を4年ぶりに解禁するという。本県は昨年「身近な人と少人数で」だったが、今年はそれもなくなるらしい。

 開花前から気が早いと言われそうだが、冒頭の句ではないが、年度替わりの多忙の中でつい見逃してしまいがちなのが桜である。久しぶりの解放感の中で見る桜は一段と感慨深かろう。ただし花見酒は羽目を外し過ぎないよう、多少の”静謐”さも意識して―。

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