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スズメのごとく喜ぶ

2023年3月25日
 〈雀の子そこのけそこのけお馬が通る〉は、言うまでもなく小林一茶の有名な句である。スズメの繁殖は年に2、3回あるが、縁起物である1年の最初の繁殖が春であるため「雀の子」は春の季語となった。

 「雀の子」を詠んだものは、ほかにも。江戸時代中期の俳人・上島鬼貫(うえじまおにつら)には「人に逃げ人に馴るるや雀の子」という句がある。子スズメが人を見て逃げはするものの好奇心から次第に近づいていく様子を詠んでいる(「スズメからの贈り物」エクスナレッジ刊)。

 「子持ち雀」に「孕(はら)み雀」、そして若草が伸びてきてスズメの体を隠すほどになることを指す「雀隠れ」…。春の季語となっている「雀」は多い。七十二候は、21日からきょう25日までが「雀始巣(すずめはじめてすくう)」だ。文字通り、雀が巣を作り始めるという意味。

 一茶にせよ、鬼貫にせよ、その句からはのどかな春の日に遊ぶかわいらしい子雀の様子が目に浮かぶようだ。一方、冬の季語には「寒雀」がある。大正、昭和期の俳人・川端茅舎(ぼうしゃ)の〈とび下りて弾みやまずよ寒雀〉もまた有名な句。地上に飛び降りた後も弾むのが止まらないスズメの様子を詠んだ。

 スズメのように小躍りして喜ぶことを「雀躍(じゃくやく)」という。日本中をまさに雀躍させた「侍ジャパン」が一昨日、凱旋帰国し多くのファンに迎えられた。キャンプ地・宮崎から改めてWBCでの健闘をたたえるとともに、それぞれの選手の今シーズンの活躍を祈る。

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