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南は夜明け

2023年3月26日
 今や死語だが1990年代ごろ県内でよく耳にした言葉に「北は夕暮れ」がある。日向・延岡地域の衰退を嘆いた言葉だ。64年に新産業都市に指定、カーフェリーも就航し、かつては発展がめざましかった。

 それだけに後退ぶりが寂しく感じられた。原因として真っ先に挙げられたのが鉄路や高速道など交通網整備の遅れ。順調に発展する県央部と県西部が宮崎自動車道で結ばれ、さらに県南部で観光開発が盛んだったイメージから県北は取り残された不満が強かった。

 「南は夜明け」と言われることもあったが、東九州自動車道は宮崎市から先に北へ延びて立場は逆転。そもそも県南部で「こちらの方がリードしている」という意識は皆無だったはずだ。主な都市が次々と高速道で結ばれ、県内9市の中で日南、串間市だけが未開通だった。

 ようやく「南は夜明け」が到来したのかもしれない。東九州自動車道清武南―日南北郷インターチェンジが昨日開通。日南、宮崎市が初めて高速道で結ばれ、県南部も高速時代に入った。人や物の往来が活発化し、防災や医療体制も大いに向上するだろう。さらに串間市まで早期の延伸を期待したい。

 もう北も南もない。県土全体が均衡ある発展を遂げるために交通基盤をいかに活用するかが問われる。日南市では宮崎市の通勤圏内として宅地開発の動きが始まっていると聞く。確かに高速道は便利だが、地域の在り方が激変する可能性にも留意していたい。

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