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早朝のカチャカチャ

2023年3月30日
 次の四つの言葉から連想される懐かしの歌は? パン、豆腐、牛乳、そして新聞―。ピンときた方も多かろう。そう、童謡の「あさいちばんはやいのは」である。この歌ができてから、間もなく60年になる。

 一番早いのはパン屋のおじさんで、次が豆腐屋さん。そして、三番目の牛乳屋さんは「めがねのにいさん」。カチャカチャと自転車で牛乳を配達するのだ。思い返せば、スーパーが普及する昭和40年代半ばごろまでは、家々の玄関にいろんな「受け箱」があった。

 縦長の新聞受け、牛乳を入れる木箱ほか、ヤクルトをはじめとする乳酸菌飲料の箱。これら飲料は買いに行くというより毎朝配達されるものだった。今の若い人がこの歌を聴いても、なぜ牛乳が「カチャカチャ」なのか理解できないかもしれない。昔は瓶入りだったのだ。

 牛乳だけでなく乳酸菌飲料も瓶入りだった。記憶に刻まれた早朝の音「カチャカチャ」。その懐かしさもあり、今でもたまに分厚い瓶に入った(昔は「牛乳瓶の底めがね」なる言葉もあった)牛乳を思わず買い求めてしまう。現在、宅配が盛んな中にあっても、帰らざる昭和の”宅配文化”である。

 ロシアのウクライナ侵攻に伴う飼料価格高騰などにより、国内の酪農家が苦境に立たされている。加えて春休みのこの時期は必然的に牛乳の消費量も落ち込む。10年前より約100戸減ったが、今も県内では215戸の酪農家が厳しい状況下で頑張っている。

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