人に人格、犬に犬格
2023年4月8日
家で飼い始めた子犬をぞんざいに扱う書生を、仲代達矢さん演じる大学教授の上野秀次郎が叱責(しっせき)する。怒り収まらぬ上野は、仕事に行くため家を出ようとするが、そこできびすを返し見送りの妻にこう言う。
「人間に人格があるように、犬には犬の犬格というものがある。その犬格を尊重してやらなければ」―。その言葉通り上野は「ハチ」と名付けたその子犬がいたずらをしても鷹揚(おうよう)に構え、深い愛情を持って育てた―。1987年公開の映画「ハチ公物語」である。
劇中の上野秀次郎のモデルとなった農学博士で東京帝大教授の上野英三郎(えいざぶろう)が実際に「犬格」うんぬんを口にしたのかどうかは分からない。おそらく創作だろうが、先日亡くなった畑正憲さんにも通じるような、ハチに対する上野の愛情と向き合い方を象徴する場面である。
きょうは「忠犬ハチ公の日」。ハチの命日は1935(昭和10)年3月8日だが、秋田犬群像維持会などが1カ月後の4月8日をハチ公の日に定めた。東京・渋谷駅前にあるハチの像は、ハチが死ぬ1年前の34年に建立。除幕式にハチ自身も出席している。今でも毎年4月8日に慰霊祭が行われる。
劇中の上野が発した「犬格の尊重」。その言葉を思い浮かべつつ「今、人格はどれくらい尊重されているのだろう」と思う。連日報じられる数々のハラスメント、DV、児童虐待…。忠犬の記念日に人間の尊厳を改めて問い直してみたくなる今の世相である。
「人間に人格があるように、犬には犬の犬格というものがある。その犬格を尊重してやらなければ」―。その言葉通り上野は「ハチ」と名付けたその子犬がいたずらをしても鷹揚(おうよう)に構え、深い愛情を持って育てた―。1987年公開の映画「ハチ公物語」である。
劇中の上野秀次郎のモデルとなった農学博士で東京帝大教授の上野英三郎(えいざぶろう)が実際に「犬格」うんぬんを口にしたのかどうかは分からない。おそらく創作だろうが、先日亡くなった畑正憲さんにも通じるような、ハチに対する上野の愛情と向き合い方を象徴する場面である。
きょうは「忠犬ハチ公の日」。ハチの命日は1935(昭和10)年3月8日だが、秋田犬群像維持会などが1カ月後の4月8日をハチ公の日に定めた。東京・渋谷駅前にあるハチの像は、ハチが死ぬ1年前の34年に建立。除幕式にハチ自身も出席している。今でも毎年4月8日に慰霊祭が行われる。
劇中の上野が発した「犬格の尊重」。その言葉を思い浮かべつつ「今、人格はどれくらい尊重されているのだろう」と思う。連日報じられる数々のハラスメント、DV、児童虐待…。忠犬の記念日に人間の尊厳を改めて問い直してみたくなる今の世相である。