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謙虚さを上回る頑張り

2023年4月24日
 ニュージーランドで2013年、同性婚を認める法案をめぐり、賛成の立場で名演説を行った議員の話を前に紹介した。「法案成立後も世界はいつものように回り続けます」などと述べ、称賛された議員だ。

 この話には後日談がある。法案成立から8年後。一人の議員が引退の演説を行った。当時反対票を投じたニック・スミスという議員。彼は自分の判断が誤りだったことを認め、LGBTQコミュニティーに謝罪し、また同法成立に尽力した議員らに敬意を表した。

 ニュージーランドでは、引退する議員のスピーチは総じて懺悔(ざんげ)や反省の弁が多いという。これはその象徴的な例だろう。「平民宰相」と呼ばれた原敬は日本が国際連盟の常任理事国になった際に「日本に欠点があるとすれば謙遜と遠慮に過ぎる点である」と述べたという。

 だが今の日本の政治において、この「謙遜と遠慮」は、過去のものであるかのようだ。「是は是、非は非」。胸を張るべきところは張りつつも、反省すべきは素直に認めて反省すればいいのだが、どうも後者ができない人が多いようである。世論にたたかれ渋々…といったパターンが多い気がする。

 きのう3町村長と12市町村議が決まり、統一地方選が終わった。全当選者に祝意を表する。同時に将来、その任を終えるとき、謙虚さは持ちつつもそれ以上に「有権者の負託に応えるべくこれだけ頑張りました」と胸を張ってほしい。そんな活動を期待する。

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