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あやめ五月雨端午の節句

2023年5月5日
 人の弱さや寂しさ、挫折といったものを優しく歌ったシンガー・ソングライターの森田童子さんに少し趣が異なる曲がある。「たんごの節句」という、自身の幼い日の思い出をつづったかのような曲である。

 「しょうぶ湯わかして弟とがまんくらべ…あざやか色の吹き流し」などと歌って1、2番とも最後は「あやめ 五月雨(さみだれ) たんごの節句」で締める。この歌詞に久しぶりに触れたのを機に、天気の良い日を選んで約42万本のアヤメが咲く都城市の早水公園に行った。

 池のほとりを彩る鮮やかな紫が、新緑の中で映える。その向こうで薫風にそよぐ30匹近いこいのぼり。心地よいひととき。ところで森田さんのくだんの歌には「しょうぶ」と「あやめ」が出てくるが、これらは漢字で書けばどちらも「菖蒲」となる。だが同じ花ではない。

 ショウブはサトイモ科で、アヤメはアヤメ科。見た目で分かる違いは花びらの付け根。ショウブには黄色、アヤメには網目状の模様がある。ちなみに「宮崎市の花」であるハナショウブは「ショウブ」と名が付いていてもアヤメ科。何ともややこしい。こちらは今月中旬ごろから咲き始めるという。

 歌に出てくるように、邪気払いとして端午の節句に湯に入れるのはショウブ。そしてきょうがその日だ。1月の「七草がゆ」ほど実践している家庭は多くないかもしれないが、残したい風習である。〈子を抱いて菖蒲湯溢(あふ)れ香り満つ〉(宮崎市・甲斐千恵子)

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