いつの間にか、野良猫がわが家に住み着き屋敷猫になった。庭仕事をしているといつの間にか近くにいてじっと眺めている。お姫様のように控えめなので雌雄不明だが名前まで付けてしまった。ヒメという。

　朝昼晩の挨拶（あいさつ）は欠かさない。「あら、散歩からお戻りですか？」と聞くとニャーと返事。会話も弾むようになった。先ごろの五木寛之さんの本紙連載で、動物と会話する人は「さびしい気もする」とあった。ネコと話すヒト。端から見たら「さびしい」だろうか。

　わが身とすれば、種を超えた友人や家族ができたと思い豊かな気分に浸っていたのだが…。のんびり屋で穏やかなヒメが、別人（別猫）に豹変（ひょうへん）するときがある。物音の激しさに驚いて出てみると、別の野良猫に対抗して毛を逆立たせ、険しい顔でシャーシャー鳴いている。

　一回り体を大きくして相手を威嚇するのは、恐怖や不安を感じたときの交感神経の働きによるもの。立毛筋を収縮させる反応はヒトの鳥肌と同じだ。自律神経の一つである交感神経はｆｉｇｈｔ＆ｆｌｉｇｈｔ、つまり「闘争と逃走」時に発動。心拍数や血圧を上昇させて戦闘モードに入るスイッチ。

　ウィズコロナで迎えた連休も残りあと２日。「週明けから頑張ろう」と交感神経モードをそろそろ始動させる方もおられよう。多忙な毎日が始まる前に副交感神経モードに身を委ねてみるのもいい。暦や時間に頓着しないネコのまったり世界をうらやみつつ。