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「難産」の末に誕生した県

2023年5月9日
 県が2020年度から3カ年で取り組んだ「郷土先覚者顕彰事業」なる事業がある。子どもたちを含めて広く郷土の先賢について知ってもらおうと、6人の偉人の伝記を漫画にし、学校や図書館に配布した。

 各年度2人ずつに分け刊行。初年度が宮崎市清武町出身の儒学者安井息軒、そしてもう一人が同町出身で「宮崎の父」と呼ばれた川越進だ。県の設置からわずか3年で鹿児島県に併合された本県を、再び独立させるべく尽力した川越の功績はご存じの通りである。

 この本で改めて川越の足跡をたどった。川越がなぜ「分県」が必要と感じたかに始まり、一度併合された県が再び独立するのがいかに難しいことだったか、そしてその困難を川越がどう乗り越えたかが、分かりやすく描かれていた。小学生でも十分理解できる内容である。

 漫画の中に「宮崎は小藩が多く、県としてのまとまりに欠けていた」というくだりが複数回出てくる。この一節に昔、県総合博物館長(当時)の長嶺泰弘さんが講演で話していたことを思い出した。いわく「(分県運動は)宮崎県の中に地域意識を育て、一つのまとまりをつくった意義も大きい」。

 川越らの努力が実を結び、宮崎県が“難産”の末に再び誕生したのは1883年のきょう5月9日だった。140年の節目に、今暮らしている「宮崎」が決して当たり前にある県ではなかったことに思いを致し、その誕生に奔走した先人たちを振り返りたい。

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