ホーム くろしお

植物の方言も貴重

2023年5月22日
 高知県出身で宮崎市に住む知人がはまっているのが朝ドラ「らんまん」だ。主人公は同県出身で著名な植物学者・牧野富太郎がモデル。知人は子供の頃、牧野植物園(高知市)で、よく遊んでいたともいう。

 序盤では「子役の高知弁が完璧」と彼が太鼓判を押していた。主舞台は東京に移ったが、無類の植物好き青年が学者として大成する過程がどう描かれるか興味をそそる。また園芸が好きな別の知人もドラマのファンで「毎回植物が紹介されるのが楽しみ」と話す。

 「雑草という草はない」は昭和天皇のお言葉として記憶するが、ドラマで主人公が同様の趣旨を語る。牧野博士と昭和天皇には交流があったそうだ。どんな植物も選ばれた時間と場所だけに現れる。その出合いを大切にしてというメッセージは自然の見方を深めてくれる。

 植物の多様性と同様に大切にしたいのが植物の方言だ。都城地方に「センヌケ」という赤い花がある。同地方特有の呼び名で千の花に抜きんでた花という意味。センイチともいう。植物名はセンノウ。牧野博士の随筆集には「仙翁華 嵯峨仙翁寺ヨリ始テ コノ華ヲ出ス」とあり、古いいわれがある。

 平田昭一編「宮崎植物誌」を見ると県内ではカキカズラを「ネコノツメカズラ」、ダンチクを「ダケク」と呼ぶなど多様な植物名があった。ネムノキを「アサネゴロ」と言うのも発想が豊かでおもしろい。植物と暮らしの関わりがしのばれる文化遺産といえよう。

このほかの記事

過去の記事(月別)