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百人一首をもう一度

2023年5月27日
 学生時代、国語の教師に「全て暗記しろ」と言われ苦労した思い出をお持ちの方も多いのではないか。小倉百人一首だ。788年前の1235年のきょう、藤原定家の選による百人一首がまとまったという。

 そのことから、きょうは「百人一首の日」。「小倉百人一首」の名は、定家が小倉山で編(へん)纂(さん)したという由来からついた。100首の内訳は恋をテーマにしたものが43首、四季を詠んだものが32首、旅の歌4首、別れを題材にしたものが1首、その他が20首という。

 1首しかない「別れ」の歌は、中納言行平の〈立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む〉だそうだ。因幡国(いなばのくに)(今の鳥取県)の守として赴任する際に詠んだ。「因幡(いなば)」と「往(い)なば(行ってしまったなら)」「松」と「待つ」が掛詞(かけことば)になった美しい歌である。

 四季の歌の中で一番多い季節は、想像がつくが秋だ。対して一番少ないのは夏で、4首しかない。その一つ〈夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ〉(清原深(ふか)養(や)父(ぶ))。「沈む暇もなかった月は、一体この雲のどこに宿をとっているのか」という言い方で夏の夜の短さを詠んでいる。

 今さらだが、こうして見てみると、どの歌も非常に味わい深い。学生時代は「暗記ありき」で、鑑賞する余裕などなかったというご同輩へ。「短い夏の夜」の後に訪れる「秋の夜長」にでも改めてこれらの歌をじっくり味わう機会を持つのも一興ではないか。

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