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ヤマモモと子どもたち

2023年5月31日
 散歩していると、宮崎市内の住宅団地にある児童公園で小学生の男児3人が声を潜めて騒いでいる。どうも周囲の目を気にしているようだ。それで無関心なふりをしていると、1人が自転車の荷台に立った。

 他の子は自転車を支えている。実は公園内でそびえているヤマモモの実に手を伸ばしていたのだ。枝ごと折っているのはちょっと乱暴だが、甘くておいしいお菓子があふれている現在、あまり見向きもされなくなった果実を採ろうとしている光景がほほえましい。

 やがて女児らも何人か集まってきて、一緒に収穫作業に精を出し始めた。たぶん共同でいけないことをしているようなスリル感が、彼らを楽しませているのだろう。どんなに採っても文句を言う近所の人はいるまい。公園沿いの道路は、既に落ちた果実で真っ赤だからだ。

 小欄でビワの実に触れたばかりだが、過ぎたと思ったらヤマモモだ。同様にこの夏は実りが早い。ただビワはスーパーで売っているが、ヤマモモはほとんどない。それでも食べるよりは焼酎などに漬け込むための需要が結構ある。もしかしたら、あの子供たちも祖父母らにお裾分けするのだろうか。

 うぶすなの 杜(もり)のやまもも高麗犬(こまいぬ)は 懐かしきかな もの言わねども 民俗学者・柳田国男の歌。うぶすなは出生地。彼と次兄の国文学者・井上通泰をしのぶ「山桃忌(さんとうき)」が毎年8月、古里の兵庫県福崎町で開かれる。確かにあの甘く酸っぱい味わいは郷愁をそそる。

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