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「是非もなし」と言わず

2023年6月2日
 441年前のきょう、織田信長が宿所としていた京都の本能寺を、織田軍の先遣として毛利攻めに向かっていたはずの明智光秀が急襲。信長は天下統一を目前にして倒れた。世に言う「本能寺の変」である。

 これまで幾度となく映画やテレビの時代劇で取り上げられてきた。光秀が謀反に至る経過などについては、作品によってさまざまだが、多くに共通しているシーンがある。信長が近侍(きんじ)の森蘭丸に誰の襲撃かを尋ね、光秀だと分かると「是非もなし」と言う場面だ。

 「是非」とは「正しいか、正しくないか」ということ。それがないということで「仕方ない」という意味だ。先日のG7広島サミット。その首脳声明には、ジェンダーに関する項目が設けられ、LGBTなど性的少数者への「暴力や差別のない社会の実現」がうたわれた。

 だがしかし、日本を除くG7各国には権利擁護や差別禁止に関する法令があるのに対し、議長国の日本だけが大きく立ち後れている。そんな中での声明だった。先日は名古屋地裁が、札幌地裁に続いて同性カップルの結婚を認めない法制度を「違憲」とした。“外堀”はどんどん埋まっていっている。

 国内の機運が高まっても、先進各国から促されても、性的少数派を守る法整備が遅々として進まない現実。それでも「是非もなし(仕方ない)」などと言わず、声を上げ続けていくしかない。そして今国会では無条件の「差別なき社会」に向けた議論を是非―。

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