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引きこもり当事者の声

2023年6月3日
 梅雨空の中、毎月楽しみにしているニュースレターが今月も届いた。ひきこもりの人や家族を支える親の会「宮崎県楠の会」発行で活動報告や告知が記載されている。設立して22年。息の長い活動が続いている。

 以前、発送作業にお邪魔した時、居心地の良さが印象的だった。会員同士、近況をおしゃべりしながら折り込みや宛名貼りに精を出す。雨で湿った封を切ると、あの時の温かな空気が漏れ出してくるようだ。最新6月号はひきこもり経験者による座談会リポート。

 「失敗したことがたくさんある。その失敗にずっと目を向けてしまう」「(家族には)普通にやってあげたい。安心させたい。申し訳ないと思っている」「死ぬことを考えないことは1日たりともない。だから今日一日、一生懸命頑張りましたね、と自分に言ってあげたい」。

 人前で話すのは苦手という3人が語った心の奥底。進行を務めた植田美紀子代表は「親に面倒を見てもらって気楽でいいね、など心ない言葉をかける人もいるが、楽しく引きこもっている人なんて一人もいない。バリアーを張って心を守り、必死に静かに生きている人たちばかりと改めて感じた」。

 登壇した方々へ、勇気を出して胸の内を言葉にしてくれてありがとう―。草間時彦の句に「死にたい日死にたくない日濃紫陽花」がある。紫陽花(あじさい)の色が七変化するように心模様も日々変わる。傷つきや不安が今すぐ解消できなくとも、いつかは―と願いたい。

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