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子どもの目

2023年6月10日
 およそ5億4千万年前の古生代初期、海中で大事件が起きた。「カンブリア大爆発」という現象で、短期間に多種多様の動物が大量出現。ピカイア、オットイア、ハルキゲニア。名前も珍奇なら形態も奇妙。

 化石を調べると、3分の2が現生の動物門に属さない生物という。なじみが薄いはずだ。捕食者も登場して進化が加速し、身を守る硬い殻の生物が現れた。そして「大爆発」の引き金になったとされるのが目の発生。捕食する側、される側の双方に視力が重宝された。

 先日、小林市内の小学校を訪れて子どもたちとしばらく過ごした。見せたい物がある、と言って男児が差し出したのは鉛筆。見かけは普通、だが芯が出し入れ自由になっている。構造を知りたくて、鉛筆の突端部分を数日かけて削ると芯がスルリと出てきて驚いたそうだ。

 筆箱やランドセルには大人の気付かない不思議がたくさん詰め込まれているのだろう。「ほかにも不思議なことがある?」と聞いたら出るわ出るわ。「この学校にはどうして宿直室がないんだろう」「体育館の屋根に草が生えているのが謎」だとか。同じ風景なのに、見える物が全く違うという不思議。

 カンブリア紀の海中は色鮮やかな生物であふれていた。光を目で捉えられるようになった古代生物のように、子どもたちも世の中を懸命に眺めている。10日は日本眼科医会が新設した「こどもの目の日」。視力はもちろん、子どもならではの視点も大切に―。

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