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小さな「藍」が集まって

2023年6月13日
 「こんなにいいところがあったのか」と、自身の不勉強を恥じた。先週末、日南市酒谷と串間市大平を結ぶ「ふるさと林道小布瀬(こぶせ)―風野線」を初めて走った。通称「アジサイロード」。およそ7キロの林道である。

 入り口から出口まで紫をはじめ青、白など色とりどりのアジサイが道路の両脇を彩る。この林道が開通したのは2001年。その後、両市の地域住民が植栽し、現在はおよそ1万3千株が植えられているという。アジサイが好きな人にはたまらないコースだろう。

 この日は雨が強かったので、車からは降りず止められる場所に停車し、ウインドー越しに花を堪能した。別名「手毬(てまり)花」とはよくいったものだ。この手毬状になった部分は「装飾花」といい、それが雨や木々の枝から落ちてくる滴を受け小さく上下する様子は見飽きない。

 アジサイの語源は「あぢさヰ(い)」。「あぢ」は小さなものが集まること。「さヰ」は「さ」という接頭語に「あヰ(藍)」が付いたものらしい。つまり「小さな藍が集まった」という意味。松尾芭蕉の〈五月雨を集めて早し最上川〉をまねし〈藍色を集めて優し手毬花〉などと思わず下手な句を作ってしまった。

 気象庁はおととい、北陸と東北地方で梅雨入りしたとみられると発表。これで梅雨のない北海道を除き、国内すべての地域で梅雨となった。しばらくは洗濯物が乾かないなど不便もあろうが、このアジサイのように梅雨ならではの風情に目を向け過ごしたい。

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