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難民への想像力

2023年6月20日
 県立図書館には、難民をテーマにした外国の作家の絵本が何冊もある。この手の本で難しいのは、日本のように平和な国の子どもたちに、どうやって難民の苦しみや悲しみを十分に理解してもらうかだろう。

 「なんみんってよばないで。」(合同出版)は、難民として祖国を出なければならない母親が子どもにいろいろと語りかける様式の本。途中途中に「(最小限の荷物に)君なら何を持って行く?」「君はどれくらい歩けると思う?」といった問いが挟み込まれる。

 読み聞かせの際、そうやって問いかけながら読み進めることで、子どもの難民への想像力を育む仕組み。作者でイギリス在住のケイト・ミルナーさんは学校の教師をしている娘から「難民について子どもたちの疑問に答える本がない」と聞いて、執筆を思い立ったそうだ。

 刊行は2019年。そのあとがきには「(難民は)2018年には7千万人を超えました」とある。14日の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によると22年末での総数は過去最多の1億840万人。ロシアのウクライナ侵攻などがあるにせよ、わずか4年の間で驚異的な増え方である。

 きょうは世界難民の日。先日の改正入管難民法の成立で、難民への対応がまるで後退してしまったかのような日本である。小さな頃から難民について学べる環境に置かれた今の子どもたちが大きくなり、この内向きさを変えて…と、せんない妄想を膨らます。

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