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復興商店街の七夕飾り

2023年7月7日
 車のナビが「目的地まであと25分」と表示したところで突然「一般車両通行止め」の看板が立ちはだかった。だが、この道以外にない。困って工事関係者に聞くと「信号が多いけど行っても大丈夫ですよ」。

 「信号が多い」の意味はすぐに分かった。普通の信号ではない。山道などによくある片側通行の信号だ。数百メートルおきにある。それほど多くの場所で復旧工事をしているということ。何度も信号に引っかかりながら、着いたのは熊本県八代市坂本町の復興商店街だ。

 同県内で67人もの犠牲者を出した3年前の豪雨。坂本町もまた甚大な被害に遭った。見たかったのは地元住民によって作られた七夕飾りである。被災した翌年から犠牲者の追悼と復興の願いを込めて飾られている。きょうの七夕を前に、どうしても一度見ておきたかった。

 高さ5メートルほどの10本の竹に結わえ付けられた、色とりどりの短冊。「災害のない1年となりますように」「1日も早い坂本の復興を」―。これらの願いが通じたのか熊本で線状降水帯が発生した今月3日は、難を逃れたという。「でもヒヤヒヤでした」と、弁当を買ったお店の女性が話してくれた。

 おとといの本紙には、今回の大雨による土砂崩れで倒壊した益城町(ましきまち)の寺の本堂の写真が載った。住職や檀家(だんか)のショックはいかばかりか。それでも前を向く住職。この春に見た、熊本地震で全壊しながらも復旧が進む阿蘇神社の楼門を重ねつつエールを送った。

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