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市内一番の豪雨被害

2023年7月11日
 「血族」「居酒屋兆治」などの作品で知られる作家の山口瞳は40年以上前、集中豪雨により自宅が大きな被害を受けた。どれくらいの被害かというと、当時住んでいた東京都の国立(くにたち)市内で最大だったという。

 その日、所属するデッサン会が開催した展覧会の打ち上げが中国料理店であり、山口は参加していた。日中は快晴。だが、入店の際1、2滴の雨がほおに落ちてきたという。それが3時間ほど飲み騒ぎ、雨の気配で窓を開けると「…雨というようなものではなかった」。

 このときの1時間の雨量は80ミリだったというから相当激しかったに違いない。きのう、活発化した梅雨前線の影響で福岡、佐賀、大分県で線状降水帯が発生するなど、またもや九州北部を中心に非常に強い雨が降った。各地で河川の氾濫や土砂崩れが起き、犠牲者も出た。

 冒頭のエピソードは山口の随筆に出てくる。その名も「水害」。被災した日、山口は「新聞もろくに読まず、テレビのニュースも見ていなかった」と、振り返っている。反省の気持ちも込められているのだろう。もしも当日、雨に関する情報を入手していれば、まだ対処のしようもあっただろうに。

 大雨はまだ予断を許さない状況のようだ。気象庁などの情報をこまめに得ることで、これ以上の人的被害が出ませんように。そして不明者が早く見付かりますようにと、県境を一つ、二つ越えただけできのうは雨どころか真夏日、猛暑日となった隣県から願う。

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