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一周どころではない

2023年7月22日
 いつ頃からだろう。「一周回って」という表現を頻繁に見聞きするようになった。「コースを一周する」といった実際の行動のことではない。「ある程度の時間を経て原点に戻る」という意味合いの言葉だ。

 使っているのは、主に若い人たちである。さまざまなシーンで使われているようだが、その中でも比較的多いのが「時がたって昔のものが再びよく見えてきたり、流行したりする」といった意味での用法だ。実際、最近はそうした現象が多くなっている気がする。

 音楽の分野では、1970~80年代に流行したシティポップが近年再び人気となっていると聞くし、前に小欄でも書いたが日用品では花柄がプリントされた「昭和のガラスコップ」が売れているという。先日、電器店に行くと”昭和テイスト”にあふれたラジカセがあった。

 大手の魔法瓶メーカーは先日、ストライプや花のポピーといった懐かしい柄の炊飯器や魔法瓶などを復刻、発売した。こうしたレトロなデザインの製品が現代の空間にあるのは、若い世代にとって新鮮だろう。一方、生粋の「昭和人間」からすれば、やはりこれらは昭和の風景とともに楽しみたい。

 県総合博物館で開催中の特別展「レトロtoミライ」に行くと、再現された「昔の喫茶店」の店内に例の花柄のガラスコップが―。まさにこれである。ほかにも理髪店にレコード店…。「一周」どころではない。頭の中を「古き良き昭和」が何周も駆け巡った。

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