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見応えのある決勝

2023年7月26日
 人気作家・池井戸潤さんに「ルーズヴェルト・ゲーム」という作品がある。野球と企業間競争を絡めた経済小説。タイトルは野球を愛した米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が語った言葉に由来する。

 「一番おもしろいゲームスコアは8対7だ」。なるほど同等の実力同士が打って走って、大崩れせず、最後まで逆転の期待を持たせる点差。息もつかせぬ展開に見る方は始終はらはらどきどきだ。夏の甲子園宮崎大会では、その意味で準決勝2試合がそうだった。

 宮崎学園が5―4で日南学園、聖心ウルスラが14―12で延岡学園を破った。全く勝敗が予測できない接戦だった。しかし得点が入らなくても見応えのある試合は確かにある。昨日の宮崎学園―聖心ウルスラ。決勝戦にふさわしく素晴らしい内容で、テレビ中継に見入った。

 両チームとも得点のチャンスに恵まれながらも、ファインプレーと投手の力投に阻まれて1点が出ない。守備側のベンチでは、氷で頭や肩を冷やすなど大変な暑さだったが、集中力は途切れずエラーは1個しかなかった。ピンチでも選手には笑顔が見られ、日ごろの練習の雰囲気まで伝わってきた。

 心地よい緊張感のまま見続けたかったが、延長十回からタイブレーク。宮崎学園が1―0で勝って、甲子園の切符を手に入れた。野球部創設20年の節目で喜びはひとしおだろう。他の45校の思いも胸に、甲子園でも全力でいい試合を見せることを祈っている。

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