もの言えぬ企業
2023年7月27日
難しい漢字なので新聞では「がくぜん」と、ひらがなで表記する。愕然。「思いもよらぬことが起き驚く」ことだ。ビッグモーターの保険金水増し請求問題でおととい、兼重宏行社長の口からこの言葉が出た。
会見で「経営層の関与は全くない」とした上で「こんなことをやるのかとがくぜんとした。許せない」―と。だが「愕然」の意味通り本当に「思いもよらぬこと」だったのだろうか。むしろ、がくぜんとしたのは社長のこの言葉を聞いた従業員の方かもしれない。
「『狂気』によってなされた事業は、必ず荒廃と犠牲を伴います。真に偉大な事業は『狂気』に捕らえられやすい人間であることを人一倍自覚した人間的な人間によって、誠実に執拗に地道になされるものです」。大江健三郎さんの師である仏文学者の渡辺一夫の言葉である。
今回の件、「狂気」は言い過ぎかもしれぬが、少なくとも車を修理する場で車を故意に傷つけるというのは常軌を逸した行動だ。兼重社長は、不正の原因の一つとして「経営陣に盲従し忖度(そんたく)するいびつな企業風土」を挙げた。これまであまたの企業不祥事において、何度も同じような言葉を耳にした。
「愕然」の「愕」の右側「咢」には「口」が二つある。「互いに言い合う」ことを意味するといい「愕」は「驚く」のほかに「遠慮せずにものを言う」という意味もある。この会社に「自由にものを言い合える環境」があればこんなことには―。もう遅いが。
会見で「経営層の関与は全くない」とした上で「こんなことをやるのかとがくぜんとした。許せない」―と。だが「愕然」の意味通り本当に「思いもよらぬこと」だったのだろうか。むしろ、がくぜんとしたのは社長のこの言葉を聞いた従業員の方かもしれない。
「『狂気』によってなされた事業は、必ず荒廃と犠牲を伴います。真に偉大な事業は『狂気』に捕らえられやすい人間であることを人一倍自覚した人間的な人間によって、誠実に執拗に地道になされるものです」。大江健三郎さんの師である仏文学者の渡辺一夫の言葉である。
今回の件、「狂気」は言い過ぎかもしれぬが、少なくとも車を修理する場で車を故意に傷つけるというのは常軌を逸した行動だ。兼重社長は、不正の原因の一つとして「経営陣に盲従し忖度(そんたく)するいびつな企業風土」を挙げた。これまであまたの企業不祥事において、何度も同じような言葉を耳にした。
「愕然」の「愕」の右側「咢」には「口」が二つある。「互いに言い合う」ことを意味するといい「愕」は「驚く」のほかに「遠慮せずにものを言う」という意味もある。この会社に「自由にものを言い合える環境」があればこんなことには―。もう遅いが。