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パーマとトイレの関係

2023年8月1日
 先日、小欄で「統計グラフコンクール」について書いた。子どもたちのユニークな作品を紹介したが、統計と言えば85年前の1938年、京浜工業地帯の工場街がちょっと変わった統計結果を発表している。

 それは「パーマネントをかけている女性事務員は、そうでない者に比べトイレに行く回数が多く、事務の能率が上がらない」というものだ。これを基に工場街では「パーマネントウェヴ嬢お断り」の声明を出した。パーマとトイレに一体どんな因果関係があるのか。

 飯田未希著「非国民な女たち」(中央公論新社)にあった逸話だ。実はその前年に日中戦争が始まり「国民精神総動員中央連盟」なる団体の委員会でパーマ禁止を決議。それを受け、各地域で反対運動が始まった。「トイレの回数」うんぬんは後付けの理由だったのだろう。

 興味深いのは、その後何度も「パーマ禁止」が呼びかけられているという点だ。「何度も」ということは、要するに“禁止令”の効果がなかったということである。同著からは、お上(かみ)や地域、さらにメディアなどの同調圧力をものともせずパーマを求めた当時の女性たちのたくましい姿が見えてくる。

 きょうは「パーマいいね」の語呂合わせで「パーマの日」らしい。戦争が奪うのは命だけではない。ファッションも含めた「自由」もまたことごとく抑圧され奪われる。同著のことを思い出したのは、パーマの日だからというより8月が巡ってきたからだろう。

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