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生き延びている人々

2023年8月3日
 日曜日に放映中のドラマ「VIVANT(ヴィヴァン)」。堺雅人さん演じる商社マンが、バルカ共和国という国に誤送金された大金を取り戻しに行くところから始まり、手に汗握るストーリーが展開される。

 キーワードは、タイトルにもなっている「ヴィヴァン」なる謎の言葉だ。最初、ドラマの登場人物たちはフランス語ではないかと推測する。やがて別の意味が浮上するが、確かに仏和辞典で「vivant」を引くと「生きている」「生き生きした」などとある。

 このヴィヴァンに「よい」を意味する「ボン」を付けた「ボン・ヴィヴァン」という言葉がある。直訳すると「よく生きる人」だが、イメージとしては社交パーティーやシャンパンが日常茶飯事のセレブに近いらしい(メーガン・C・ヘイズ「幸せに気づく世界のことば」)。

 自民党女性局がフランス研修中に撮影した写真が批判を浴びた。写真の中の喜々とした彼女たちに「ボン・ヴィヴァン」の臭いをかぎ取った人もいよう。研修を批判するつもりはないし、観光地の一つも回って記念写真を撮ることにも目くじらは立てまい。問題はそれをSNSにアップする感覚だ。

 実はヴィヴァンには「生き延びている」の意味もある。今、貧困の中にあったり先の豪雨で大きな被害を受けたりして、その日その日を必死に“生き延びて”いる人たちが大勢いる。そうした人々への想像力を培うことの方が海外研修より先という気もする。

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