数十巻に及ぶ「宇宙」をテーマにしたＤＶＤを見るのが目下の趣味だ。米国で作られたもので、科学者やＮＡＳＡ（アメリカ航空宇宙局）の職員らが宇宙のさまざまな現象について、分かりやすく解説する。

　ただ気になることが一つ。惑星同士の衝突時などにおける爆発の規模を説明する際に「原爆の○倍ものエネルギー」との表現が何度も出てくることである。それを登場する科学者らが「すごいでしょ」みたいな顔で説明するのを見ると何とも複雑な気持ちになる。

　むろん単にエネルギーを数値化しただけのことで他意はないことは分かる。こちらの考えすぎであることも承知の上で、米国人である彼らは科学者として日本に落とされた原爆について数値ではなく、どれほど具体的なイメージを持ち得ているのだろうと考えたりもする。

　一方、こちらは論外である。米国で映画「バービー」が公開された日に、ＳＮＳ上でバービー役の俳優の髪の毛が「きのこ雲」になった合成画像が拡散された。問題は、こともあろうか映画の公式アカウントが、この画像に対して好意的なコメントをし、その後、批判を受けて削除したことである。

　きのう広島であった平和記念式典で、地元の小学生２人が朗読した「平和への誓い」。そこに「自分の思いを伝える前に、相手の気持ちを考える」という一文があった。シンプルだが、今回の件も含めて今の世界に決定的に欠けているものに思えてならない。