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やぶさかでない

2023年8月10日
 「全然」と同じく現在では専ら否定の表現とセットで使われる言葉がある。「あながち」も「やぶさか」もそう。「あながち悪いとは言えない」「協力するにやぶさかでない」など、いずれも否定が後に続く。

 「まんじり」もその仲間だ。本来は「ちょっと眠る」ことを意味するが「ゆうべはまんじりとした」とは言わない。「まんじりともせず一夜を明かした」という風に使う。一昨日ときのうの夜、台風6号の接近で、まさにその言葉通りの夜を過ごした方もおられよう。

 多くの人が避難を余儀なくされた。さらにきのうの夜は、南部山沿いで線状降水帯が発生。不安と緊張の一夜となった。当初西に進んでいたのに、まさかのUターンで九州へ。夏の台風は迷走しやすいと言われているが、ここまでとは。しかも速度が遅いので厄介である。

 マイナンバー総点検の中間報告がおととい公表され、保険証とのひも付けミスが新たに千件以上確認されたという。来年秋の現行保険証の廃止に向けまっしぐらかと思いきや、最近では「暗証番号なしでの申請や交付を認める」方針を打ち出したり、担当大臣が名称変更に言及したりと迷走気味だ。

 先述した「やぶさかでない」は「ない」が付いていても「渋々と」ではなく「ためらわず」と積極的な意味だ。この際、渋々でもいいから「来秋」に固執せず地に足の着いた検証を。台風と違って速度を遅くしたり、場合によっては止まってもいいのだから。

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