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富士山

2023年8月20日
 富士山が世界遺産に登録されて10年になる。山好きとしては一度は登頂したいと思うのだが、まだ果たせていない。仲間には「富士山は遠くから眺めるもの」「山高きゆえに貴からず」などと弁解している。

 とはいえ、日本一高い上に秀峰だから気にはなる。本県からも登った人が増えてきて時々話を聞く。感想はそれぞれだ。「ご来光に心が洗われた」「雲で何も見えず疲れた」など。天候次第で満足度は変わるが、やはり日本最高峰に立った達成感は格別のようだ。

 ただ登山道に連なるすさまじい登山客、寝る場所をやっと確保できる山小屋、悪化するごみやトイレの事情などをテレビで見ると、登山には体力だけではない忍耐力が要ると思わせる。今年は山の日(11日)からの3日間で登山客が1万人を超え、コロナ前を上回る勢いだ。

 夜通しで山頂を目指し日帰りで下山する”弾丸登山”が危険行為として問題になっている。外国人が目立ち、装備の貧弱な登山者が多い。スニーカーに半袖・半ズボンの軽装もいる。3千メートルを超す山は高山病や低体温症、また滑落などで生命の危険が格段に増す。行程の余裕と万全の備えが必須だ。

 「富士が嶺や裾野に来り仰ぐときいよよ親しき山にぞありける」。歌人若山牧水が富士山を仰ぐ静岡県沼津市の松原に居を構えたのが1920年。古来富士山の眺めは日本人の心象に刻まれてきた。登録10周年を機に、もっと仰ぎ見る価値が見直されていい。

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