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露命ではないが…

2023年8月26日
 〈露と落ち露と消えにし我が身かな浪速(なにわ)のことも夢のまた夢〉。ご存じ、豊臣秀吉の辞世の句である。現在、NHK大河ドラマ「どうする家康」の中で、ムロツヨシさんが何とも怪しげな秀吉を演じている。

 秀吉のこの歌は自身の命や人生を露に重ねている。実際、はかない命のことを「露命」という。だが、最近はこの熟語を見ると「ロシアの命運」、または「ロシア大統領の命運」に見えてしまう。かの大統領が早期の勝利を見込んで始めたウクライナ侵攻だったが…。

 ウクライナの予想以上の抵抗と欧米のウクライナへの支援などによって、戦争は長期化。1年半の月日がたち、米紙ニューヨーク・タイムズによると両軍の死傷者は50万人、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の統計では民間人の死者は1万人近くにのぼるという。

 戦況が泥沼化してもプーチン政権は”露命”とはなっていない。さりとて、盤石とも言えぬようだ。先日は、武装反乱を起こした民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏に近いとされる侵攻の統括副司令官を解任。その後、プリゴジン氏の乗った小型機が墜落。さまざまな臆測が広がっている。

 「何も持たぬ百姓だった男が、ありとあらゆるものを手に入れてきた。そういう男は欲に果てがない」。大河ドラマで松本潤さん演じる徳川家康が秀吉を評した言葉だ。絶大な権力を手に入れた、かつてKGBの諜報員だった男の欲と野望は一体どこまで―。

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