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首相の宿題

2023年8月28日
 今もたまに夢に見る。“舞台”は決まって仲の良かった友人宅。大の苦手だった数学のプリントを必死に写させてもらっている自分がいる。それがまた膨大な量なのだ。言うまでもなく、夏休みの宿題である。

 夢の中とはいえ、その焦燥感はリアルだ。「早くからやっておけば…」と後悔する。目が覚めると、ホッとすると同時に怒りがこみ上げてくる。半世紀近く経っても夢に出てくるほどのトラウマを植え付ける夏休みの宿題とは一体何なのだという“逆ギレ”である。

 25日に続き県内15市町村で、きょうから2学期や1学期後半の授業が始まる。みな無事に宿題は終えただろうか。友人のみならず家族の手も借りつつ何とか乗り切って「来年こそは早めにやるぞ」と誓っている子どももいるだろう。その気持ち、ぜひ来年まで持ち続けて。

 宿題があるのは児童や生徒だけではない。この国を動かす“偉い大人”もしかりだ。来年秋までに片付けなければならない「マイナンバーカード問題」という宿題に追われるのは岸田文雄首相。そこに来て、今度は「東京電力福島第1原発処理水の海洋放出」という新たな宿題が、この夏加わった。

 安全の維持、風評被害の対策、輸出再開に向けた中国との交渉…。学校の宿題と違い、こちらは多くの人の生活が懸かっているから大変だ。30年にわたる長期の宿題とくれば、なおさらである。学校の宿題と同じなのは早め早めの対応が大事という点だろう。

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