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文化財保護施行の日

2023年8月29日
 「日本人はこうした”貴重なもの”の取り扱いが全く下手でデタラメだ」。今から74年前の1949(昭和24)年1月26日、法隆寺(奈良県)の金堂(こんどう)から出火し、国宝の十二面壁画の大半が焼けてしまった。

 冒頭の言葉は、当時ロンドン・タイムスの東京支局長であったフランク・ホーレーという人が嘆いたもので、東京消防庁のホームページに載っている。第2次世界大戦中にも、フランスや米国の研究者らが金堂に関する本を出版し、とても売れていたのだという。

 原因は不審火とも漏電ともいわれているが断定には至っていない。国内でも壁画焼損の衝撃は大きかったようだ。災害による文化財保護の危機を憂慮する世論が高まり、翌50年に文化財保護の統括的法律として、文化財保護法が制定。同年のきょう8月29日に施行された。

 文化財の脅威となる災害は、火災に限らない。6月末から九州北部を襲った大雨によって被害を受けた文化財は福岡、佐賀、大分の3県で少なくとも15件あったという。県内では今月、台風6号の影響で、都城島津邸内の国登録有形文化財・都城島津家住宅石蔵の壁のしっくいが一部はがれ落ちた。

 金堂壁画が焼けた1月26日は「文化財防火デー」として各地で消火訓練などが行われる。文化財保護法施行の8月29日は何かが実施されるわけではないが、今年は関東大震災から100年となる9月1日の直前でもあり、防災と文化財を考える機会にしたい。

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