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治まるめい…

2023年9月8日
 〈上からは「明治だ」などというけれど「治まるめい」と下からは読む〉。1868年のきょう、元号が慶応から明治に変わった。これは当時の人が詠んだ狂歌である。「治まる明(めい)」とは、しゃれが利いている。

 「明治」の名の由来は儒教の経典「易経」にある「聖人南面して天下を聴き明に嚮(むか)ひて治む」という言葉。「聖人が北極星のように顔を南に向けてとどまることを知れば、天下は明るい方へと向かって治まる」という意味。その「明るいと「治まる」から取った。

 とはいえこの1868年という年は、新政府軍と旧幕府軍による「戊辰戦争」が勃発(ぼっぱつ)した年。その後、国内では西南戦争まで士族の反乱が相次ぎ、内乱が終われば今度は日清戦争に日露戦争が起きるなど、争いが続いた。また藩閥政治に対する庶民の不満もくすぶっていた。

 狂歌の中の「治まるめい」は核心をついているといえそうだ。明治だけではない。国民の平和と世界の繁栄を願う意味の「昭和」も「内外、天地ともに平和が達成される」という「平成」も、振り返ってみると、なかなか“命名”されたときの思いのようにはいかないようである。さて、令和は…。

 ちなみに「大正」。これも「易経」に由来し「政(まつりごと)は、それを行う者が民の意見や言葉を喜んで聞き入れるならば、正しく行われる」という趣旨だ。「人の話をよく聞くこと」を身上とする、令和の首相にも再度かみしめてもらいたい言葉である。

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