一念発起して英会話を勉強しようと、以前に勢いで買って開かなかったテキストのＣＤを聞いている。男女２人の短い会話が５０編ほど流れるのだが、内容がやたらと”負のオーラ”に満ちていてびっくりした。

　例えば「貧しい人に募金してくれない」と女が言う。男は「どうせ自分が使うんだろう」と返す始末。一番心がすさむのは女「週末に時間ない？」、男「お、デートの誘いならＯＫさ」、女「ボランティア頼みたいんだけど」。すると男は「ノー。俺は忙しいんだ」。

　ほかにもバイク通学禁止をとがめられた女が「見つからなければいいのよ」。保証期間に故障した電化製品について店員いわく「細則を見て。これは対象外」、客は「詐欺だ」。新入社員に何か暗い過去があると疑う社員、ダイビングを怖がる女に無理強いする男などなど。

　普通の会話もある。だが全体の流れから裏に悪意があるのではと邪推してしまう。しかし、はたと思い至った。「これは浮ついた気持ちで海外旅行する者に気を引き締めさせるための善意では」。現実の厳しさを教えようとしているのだと好意的に解釈した。物事は受け止め方で善にも悪にもなる。

　嫌な事件が続くと性悪説に陥りそうだが、心温まる話題に触れると「人間捨てたものじゃない」と思う。人間関係は時につらいが、いい人も悪い人も簡単に割り切れないからおもしろいともいえそうだ。そう思えば少し心が軽くなる。今日から自殺予防週間。