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思いにまかせぬ人事

2023年9月14日
 現在は松本潤さん。過去にNHK大河ドラマで徳川家康を演じた俳優はたくさんいる。その中でも2009年「天地人」の松方弘樹さんの家康は、狡猾(こうかつ)さだけでなく、俗人ぶりにおいても強い印象を残した。

 関ケ原の戦いに勝った後、豊臣方の諸将を改易、減封(領地などの削減)する書状を処理する”松方家康”の表情の、いやらしいまでに楽しそうなこと。これが某中古車販売会社や芸能事務所の不祥事で見聞きするようになった「生殺与奪権」を持つ者の表情か。

 晴れて天下人となった家康ならば、家臣など周囲が何を言おうと各武将や大名の処遇は思いのままにできたはず。一方、大きな権力を持ちながらも、なかなか独断で”人事”を行えないのが、現代の国のトップ・内閣総理大臣だ。それは岸田文雄首相も例外ではなかろう。

 きのう、内閣改造と自民党役員人事を行った。首相就任以来、3度目の本格人事。思い描く理想はあっただろうが、派閥間のバランスに苦慮し党重鎮からの干渉などもあったといわれる。総裁選が近いことを考えると「むべなるかな」である。「ここで聞く力を発揮した」との皮肉の声も聞かれる。

 昔の缶チューハイのCMではないが、おそらく「すったもんだがあり」誕生した岸田改造内閣。心機一転、山積する難問に取り組んでくれることを期待しよう。首相とて政権の”生殺与奪権”は、間接的に国民が持っていることをお忘れではないはずである。

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