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秋の七草

2023年9月23日
 〈吾木香(われもかう)すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ〉。若山牧水の第3歌集「別離」にある有名な歌である。吾木香は違うが「すすき」と「かるかや(刈萱)」は、同じイネ科の植物で似ている。

 先日、小欄で高鍋町の国道10号沿いで見頃を迎えたパンパスグラスについて書いたが、白状すると実は昔、これをススキだと思い込んでいた。写真でススキとパンパスグラスを見比べたら、違いがよく分かる。見た目においての一番の違いは穂先のボリュームか。

 春ほどメジャーではないが、秋にも「七草」はある。春の「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロこれぞ七草」の覚え方は有名だが、秋の「ハギ、キキョウ、クズ、フジバカマ、オミナエシ、オバナ、ナデシコ秋の七草」は、それほどでもない。

 この中の「オバナ」がススキである。「尾花」と書く。動物の尻尾に似ていることからそう呼ばれる。万葉集にある、山上憶良の〈萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 をみなへし また藤袴 朝貌(あさがお)の花〉。これが秋の七草の由来といわれる。最後の「朝貌の花」が、諸説あるがキキョウとされる。

 おかゆにして食べる春のそれとは違い、秋の七草は観賞用であることも知名度の低い一因か。とはいえ、ナデシコの紫といい、オミナエシの黄色といい総じて淡く情趣に富む。どこかで見つけたら、じっくり”目で味わう”のもいいだろう。きょう秋分の日。

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