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伝言板となった西郷どん

2023年9月24日
 9月24日は明治維新の立役者・西郷隆盛が1877(明治10)年に鹿児島市の城山で自害した日だ。つまり日本国内で起こった最後の内戦・西南戦争が終結した日、武士の世に終止符が打たれた日ともいえる。

 ちなみに、太陽暦は72(同5)年採用なので、この「南洲忌(なんしゅうき)」と呼ばれる命日は太陽暦の日付だ。西郷は一枚も写真を残していないが、ワシントンで撮影された長男やおいたちの写真が最近福岡県で発見されて話題になるなど、今でも強く関心を引きつけている。

 西南戦争では本県も主要な戦場となり大きな傷跡を残したので、負の評価もあるのは確かだ。だが維新の功労をはじめ波瀾(はらん)万丈の生涯、胆力があり清廉な人柄で抜群の人気がある。写真がない分、西郷といえば日本人の多くが東京・上野公園の銅像を思い浮かべるだろう。

 銅像の除幕式は98(同31)年。「賊軍の将」からたちまち顕彰される立場になった。その知名度ゆえ、意外な時に西郷像が活躍している。今年で100年になる関東大震災だ。震災後の写真を見ると西郷像にたくさんの張り紙。離ればなれになった家族らが連絡先を知らせる伝言板として活用した。

 庶民の消息をつないだのが、富や高位高官を拒んだ西郷(せご)どんらしい。かつて駅などに設置された伝言板を思い出す年配者は多いだろう。今や伝言板はSNSに代わったが、ネット環境が危うい大規模災害時には、やはり避難所などにあると役に立つ伝言板だ。

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