お菓子のメリーゴーラウンド
2023年9月28日
昔の子どもにとって夢空間だったデパート。そこを夢空間たらしめたのは、最上階のレストランや屋上の遊具広場だけではない。デパート以外ではあまり見られなかった「ちょっとしたもの」もそうだった。
例えば、上部にガラスの鉢のようなものがあり、そこに鮮やかな色のオレンジジュースが噴き出していた自動販売機。そしてもう一つ。説明しにくいが「キャンデーや一口サイズの和菓子など、たくさんの種類のお菓子が入っていて、ゆっくりと回る円形の台」。
「ラウンド菓子」というらしい。だが、知人が言った「メリーゴーラウンド」との表現がこの装置の魅力を言い表している気がする。宮崎山形屋の「デパ地下」にあるこのメリーゴーラウンドが、今月いっぱいで終了するらしい。売り場に「お知らせ」が掲示してあった。
ふと星新一さんの「友を失った夜」という作品を思い出した。未来のある夜、子どもと祖母がニュースを見ている。報じられているのは危篤状態にある「地球で最後の1頭となったゾウ」の容体。とても静かに、淡々と描かれているがゆえに「失われるもの」の存在の大きさがより強調されている。
モノであれ店であれ、ずっとあり続けると漠然と思っていたものが突然なくなるというのは、コロナ禍の3年で多々体験したことである。そのせいだろうか“回るお菓子”の終了から物語とはいえ動物の絶滅まで、思考が広がり過ぎてしまった秋の一日である。
例えば、上部にガラスの鉢のようなものがあり、そこに鮮やかな色のオレンジジュースが噴き出していた自動販売機。そしてもう一つ。説明しにくいが「キャンデーや一口サイズの和菓子など、たくさんの種類のお菓子が入っていて、ゆっくりと回る円形の台」。
「ラウンド菓子」というらしい。だが、知人が言った「メリーゴーラウンド」との表現がこの装置の魅力を言い表している気がする。宮崎山形屋の「デパ地下」にあるこのメリーゴーラウンドが、今月いっぱいで終了するらしい。売り場に「お知らせ」が掲示してあった。
ふと星新一さんの「友を失った夜」という作品を思い出した。未来のある夜、子どもと祖母がニュースを見ている。報じられているのは危篤状態にある「地球で最後の1頭となったゾウ」の容体。とても静かに、淡々と描かれているがゆえに「失われるもの」の存在の大きさがより強調されている。
モノであれ店であれ、ずっとあり続けると漠然と思っていたものが突然なくなるというのは、コロナ禍の3年で多々体験したことである。そのせいだろうか“回るお菓子”の終了から物語とはいえ動物の絶滅まで、思考が広がり過ぎてしまった秋の一日である。