一茶とカールと名月と
2023年9月29日
〈名月を取ってくれろと泣く子かな〉。小林一茶の有名な句である。収められているのは一茶が57歳のときの句文集「おらが春」だが、それより前の句日記に〈あの月を取ってくれろと泣く子かな〉がある。
一茶は、4人の子どもを幼くして病気や事故で亡くしている。「おらが春」は、わずか1歳で世を去った長女「さと」の死を中心に俳句を交え記したものだ。「名月」から始まる他の句には〈名月や膳に這(は)いよる子があらば〉〈名月や膝を枕の子があらば〉がある。
「月を取って」とせがむ幼子(おさなご)とその親。それを詠んだ有名な句が日本にあることなど知るよしもなかったであろう米国の絵本作家が、この句と同様の世界観の作品を残している。「はらぺこあおむし」などで知られるエリック・カールさんの「パパ、お月さまとって!」。
カールさんの娘が幼いころ、月を「とって」とおねだりしたことに着想を得たという。絵本の中のパパは月を取りに行く。長い長いはしごを持ってきて、それを高い山のてっぺんに立てて…。仕掛け絵本になっていて楽しい。この絵本と一茶の句に共通しているのは親子の温かく優しい情景である。
きょうは中秋の名月。天気がやや心配だ。中秋の名月が必ず満月と一致するわけではないが、今年は「一致する年」である。次に一致するのが7年後の2030年と聞けば、なおさら大人でも手を伸ばして取ってみたくなるような名月が見られることに期待。
一茶は、4人の子どもを幼くして病気や事故で亡くしている。「おらが春」は、わずか1歳で世を去った長女「さと」の死を中心に俳句を交え記したものだ。「名月」から始まる他の句には〈名月や膳に這(は)いよる子があらば〉〈名月や膝を枕の子があらば〉がある。
「月を取って」とせがむ幼子(おさなご)とその親。それを詠んだ有名な句が日本にあることなど知るよしもなかったであろう米国の絵本作家が、この句と同様の世界観の作品を残している。「はらぺこあおむし」などで知られるエリック・カールさんの「パパ、お月さまとって!」。
カールさんの娘が幼いころ、月を「とって」とおねだりしたことに着想を得たという。絵本の中のパパは月を取りに行く。長い長いはしごを持ってきて、それを高い山のてっぺんに立てて…。仕掛け絵本になっていて楽しい。この絵本と一茶の句に共通しているのは親子の温かく優しい情景である。
きょうは中秋の名月。天気がやや心配だ。中秋の名月が必ず満月と一致するわけではないが、今年は「一致する年」である。次に一致するのが7年後の2030年と聞けば、なおさら大人でも手を伸ばして取ってみたくなるような名月が見られることに期待。