ラジオで曲がかかる際などによく耳にする「クロスフェード」という手法がある。前の曲の終わりの部分をフェードアウト（徐々に音量を小さくしていく）しながらそれに次の曲の頭をかぶせる方法である。

　季節の移ろいも、これに似たところがある。徐々に去りゆく夏に来る秋が重なり、やがて夏の余韻は完全に消える。しかし、今年はちょっと違う。夏のフェードアウトがやたらと長い。秋がかぶさっても簡単には消えない。秋はその存在をなかなか示せないまま。

　そうこうしているうちに”年の瀬”がちらりとこちらをうかがい始めた。書店に行けば来年のカレンダーが並び、コンビニに行けばクリスマスケーキのカタログを手渡される。宝くじ売り場では「ハロウィーン」の名を冠したくじが売られ、おせちの広告も目にするように。

　そうした風物詩ならばまだいいのだが、秋の頭越しに例年よりひと足もふた足も早く来たのがインフルエンザの流行である。県はおととい、その発生が流行注意報レベルを超えたと発表した。同注意報レベルの基準値を超えたのは、過去１０年間で最も早いといい感染対策の徹底を呼びかけている。

　最近、心なしか街中でマスク姿の人が増えている気がしていたが、コロナだけではなく、インフルエンザの影響もあるのだろうか。早く来たならその分早々にフェードアウトしてほしい招かざる感染症であるが、ともあれマスクに加えて手洗いもしっかりと。